イタリアの寓話
イタリアには、子どもたちに言い聞かせている「伝説の寓話」があると聞いたことがあります。
レオナルド・ダ・ビンチが「最後の晩餐」を描くとき、最初に取りかかったのは、キリストです。
街に出て、公園を歩いていたときに、「目が澄んで、肌がキレイで、すがすがしい好青年」がいた。その人に「モデルになってください」と声をかけ、キリストの絵を描いたそうです。
それからひとりずつ弟子を描いていって、最後に残ったのが、裏切り者のユダです。
「最後の晩餐」には13人が描かれています。描きはじめてから最初の数年でキリストと11人の弟子を描くことができたものの、ユダだけが思うように描けず、ダ・ビンチは3年以上苦しんだそうです。
そんなとき、薄暗い酒場の片隅に、ひとりの男性を見つけました。人生の悲哀、裏切り、憎しみ、妬みを全身に背負っているような男でした。
ダ・ビンチはこの男に近づき、「モデル代を払うから、何時間か私のために時間をくれないか」と声をかけた。男は、「いいですよ。もう、どうせ俺の時間なんか、誰も必要としていないし」と返事をし、モデルになったのです。
ダ・ビンチが絵を描き終えたとき、モデルの男の目から涙が溢れてきたそうです。
「なぜ、泣いているのですか? 感動して泣いたのですか?」
ダ・ビンチが尋ねると、男は、こう答えた。
「あなたは、私を忘れたのですか? 3年前に、あなたは私をモデルにして『キリスト』を描いた。3年たって、もう一度あなたから声をかけられ、今度は誰のモデルになるのかと思ったら、裏切り者のユダだった。これが泣かずにおられようか……」
捉え方はいろいろでしょうが、正しく生きていればこうはならなかっただろうにと私は思っちゃうんですけどね❗️